新人メタデータコーディネーターが「2018年映画のテレビ露出」を調べてみた!<テレビ番組編>

 

初めて記事を書きます、新人メタデータコーディネーターの荒川です。

昨年2018年の秋よりエム・データへ入社し、前職ではテレビ業界ではなく映画業界におりました。社内向けではありますがデータを基にして映画興行収入の予測などをしていたことから、データを活用した事業に興味を持ち、業界を少しだけ移動してやってきました。元々映画業界へ興味を持ったきっかけも、大学時代に朝の情報テレビ番組のADアルバイトをしていた中で、映画の宣伝にいらっしゃったスタッフさんたちに憧れるようになったので、ぐるっと一周回ってきたような経歴です。

家族や友人に「転職先はどういう仕事なの?」と尋ねられるのですが、あまり上手く伝えられていない気がします。ご存知のとおり、エム・データは、テレビ番組やTV-CMの放送内容をテキスト化・データベース化して「TVメタデータ」を構築し、データ提供や調査を行っている会社ですが、お客様がその「TVメタデータ」をどのように活用しているのか、私自身がまだあまり具体的にイメージできていないのかもしれません。

ということで、メタ初心者として「たとえば前職の自分がデータを活用するとしたら、こんなことがわかるかもしれない」ということを意識しながら、一番身近だった映画作品のテレビ露出について見てみたいと思います。映画評論や分析の専門家ではないので、深い考察というよりもケースステディとして見ていただけますと幸いです。
まず最初に、調べていく対象の作品を2018年興行収入の上位16作品にしました。

興行収入2018年ランキング

 

興行収入のデータは日本映画製作者連盟さんの2019年記者発表資料(2018年度統計)を参考にさせていただきました。
16作品という中途半端な数で出したのは、一般的なメジャータイトルと宣伝手法が異なるであろう16位の『カメラを止めるな!』を入れて差異を見てみたかったためです。

TVメタデータを抽出

まずはエム・データの膨大なTVメタデータの中から、今回のテーマに合ったデータを抽出します。TVメタデータは「①番組データ(番組放送内容)」「②TV-CMデータ(TV-CM出稿内容)」「③商品データ(番組で紹介された商品情報)」「④スポットデータ(番組で紹介された店・宿・観光地等の情報)」の4種あるのですが、今回は「①番組」にフォーカスしようと思います。

次に放送局ですが、エム・データは2019年2月現在、関東・中京・関西エリアのテレビ局で放送されたデータを取っているので(ちなみに、春頃からTV-CMデータをBS局まで拡大します!)、今回は関東の放送局(NHK、Eテレ、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)にしてみます。

前述の16作品ごとに公開前2週間、公開後2週間、計4週間分、作品タイトルのキーワードでデータ抽出をしました。なお、エム・データの番組データは「EPG(電子番組表)」とは異なり、番組単位ではなく、話題単位やコーナー単位でデータを細分化しています。結果、話題単位では全部で1,604件出てきました。このままカウントしていくこともできるのですが、今回は分かりやすく、番組単位でカウントし、1,010件としました。それでは、このデータを興行収入と紐づけてグラフ化してみましょう。

興行収入とテレビ番組露出の比較

 

テレビ番組露出が多かった作品は、上から順(図の右から順)に『銀魂2』『スター・ウォーズ』『コード・ブルー』でした。

『カメラを止めるな!』は公開前後2週間でのテレビ露出が公開日当日の1件だけと、この上位作品群の中で奇跡的な数字を出しています。

また、左上に位置する『ボヘミアン・ラプソディ』や『名探偵コナン』は、ほかの作品よりもテレビ露出がさほど多くなかったにもかかわらず興行収入の高さが見られ、口コミ力の高さ、また固定ファンの支えによる安定感を推測できます。ちなみに『ドラえもん』も同じくですが、毎週放送している通常のアニメ放送の『名探偵コナン』、および同キャラクターを使用したイベント・キャンペーン等については、劇場版について触れていない場合カウントしておりません。

テレビ番組露出の推移

 

次に公開前後何日目にテレビ番組露出が多いのか、日別推移を見ていきます。「0」が公開初日、マイナスが公開前、正数が公開後になります。
全体的に露出の高さをキープしている『銀魂2』のほか、『スター・ウォーズ』『コード・ブルー』公開初日にドーンと上がっているのが見られます。
 
 

 

その公開初日にどのような番組に出ていたのか、グラフ化する前の詳細データを調べてみたところ、どちらも朝の情報番組を中心に取り上げられており、『スター・ウォーズ』は公開日前日に前夜祭を実施していた内容、『コード・ブルー』はキャストによるスタジオ出演が大きな要素でした。『コード・ブルー』に関しては、東宝さんが邦画も金曜日公開へシフトしたからこその出演内容ですね。

全体の放送時間帯で見ても、4時~7時台での番組露出がダントツとなっています。
 

(コーナー別露出時間帯・全16作品・公開前後4週間)
 

朝の時間帯では、日本テレビさんとフジテレビさんが顕著に出ていますね。

他にも公開3日前と公開5日後に『リメンバー・ミー』が、また公開8日前に『スター・ウォーズ』が跳ねており、こちらも内容を見てみると朝の情報番組でイベント等が取り上げられていました。

作品担当者であればこのような露出は把握されているかと思いますので不要ですが、もし私が興行会社やチケット販売に携わる会社の方だったら、盛り上がった作品のキャッチアップをしてチケットの露出の仕方を考えられるだろうし、ライバル作品の宣伝担当者だったら、その時間はテレビではなくWebの告知に力を入れるなどに活用できるかもしれないなと思います。

テレビ露出の番組カテゴリ

それでは情報番組以外での露出はどうなのか見てみます。データにある番組カテゴリから、『コード・ブルー』の「ドラマ」、『ドラえもん』の「アニメ/特撮」、『グレイテスト・ショーマン』の「音楽」、『銀魂2』の「バラエティー」での露出が目立ちました。
 

 

先ほど劇場版に触れていない通常の『ドラえもん(アニメ放送)』はカウントしないと申しましたが、こちらの『ドラえもん(劇場版)』の「アニメ/特撮」は全て劇場版の告知ありの『ドラえもん(アニメ放送)』がカウントされています。同じように『コード・ブルー』はドラマ版の『コード・ブルー』のスピンオフ作品などの放送があり、その枠での告知で確実なファン層への展開とみられます。また、『コード・ブルー』は同作品以上に、ほかのドラマの中での告知も多く見られました。

『グレイテスト・ショーマン』の「音楽」は映画サウンドトラックの音楽チャートランクインのほか、ダンスのコラボPRが取り上げられていました。

『銀魂2』は「アニメ/特撮」を除く広いジャンルで満遍なく露出があり、特に「バラエティー」でキャスト稼働ができる実写邦画の強みが感じられます。

『ボヘミアン・ラプソディ』『カメラを止めるな!』テレビ番組露出推移

これまでは公開前後2週間ずつで見ておりましたが、この期間では収まらない伸びを見せていた作品が『ボヘミアン・ラプソディ』と『カメラを止めるな!』でした。まずは『ボヘミアン・ラプソディ』の推移から見ていきます。
 

 『ボヘミアン・ラプソディ』(公開日:2018年11月9日)

公開前の露出はさほど高くないにもかかわらず、公開後「情報/ワイドショー」「ニュース/報道」「音楽」での定期的な露出が続き、年始に若干落ち着くも、1月7日にゴールデングローブ賞受賞、1月23日に興行収入100億円突破などの偉業が報じられ、作品告知の後押しをしていました。

『グレイテスト・ショーマン』でも顕著でしたが、音楽に力のある映画だとサウンドトラックの音楽ランキングチャートインや音楽番組での特集が組まれやすいのがいいですね。私もよく音楽ストリーミングサービスでクイーンの楽曲を聴いていたのですが、このようなサービスが登場する前と現在とでテレビ番組視聴率がどう変わったのかなんかも気になります。

今後もまだまだ続いていきそうな『ボヘミアン・ラプソディ』の露出に注目です。
 

『カメラを止めるな!』(公開日:2018年6月23日)
 

続いて『カメラを止めるな!』の番組数は公開前後2週間では1件だけ、という結果でしたが、公開日から空くこと1ヶ月、以降連日露出が続いているという期待通りの珍しいグラフになりました。また、『ボヘミアン・ラプソディ』と比べ「バラエティー」での露出が多いところが特徴的で、8月13日のバラエティ出演を皮切りに主演の濱津隆之をはじめとするキャストや監督がゲスト出演していました。さらに11月7日8日に再び縦軸が伸びているのは、「新語・流行語大賞」に「カメ止め」がノミネートされたということでした。

また、9月9日に上位15作品のジャンルでは登場しなかった「演劇/公演」というジャンルが新たに登場しました。具体的な番組内容を見てみると、なんと予想もしていなかった「笑点」でした。以下番組の内容です。
 

春風亭昇太がお題を出して、メンバーが面白おかしく答える。(二問目のお題)「カメラを止めるな」という映画が低予算で大ヒットしている。そこでメンバーは様々なものを「止めるな」と言う。春風亭昇太が「何で?」と聞いたら答える。(エム・データ「番組データ」より)

 
こんな形で取り上げられているなんて面白い!どの程度テレビ番組での露出があると十分な知名度があると認められ、お題として取り上げてもらえるのか、なんかを調べてみるのも面白そうです。
 
 

感想

これまで漠然とテレビを見ながら体感していた盛り上がりが、実際にデータに表れていくとわくわくしますね。数字を見ているだけではなぜ伸びているのか疑問に思うものでも、個別に放送番組内容を見ていくと関連性が理解できるのがとても面白いです!

今回はサンプル数を16作品に絞って調べたため、それぞれ作品ごとの色味が個別に見られましたが、作品の特異性に捕らわれず社会的な映画全体の傾向を見ていきたい場合などには、もう少し大きい数のデータで比較していく必要がありそうです。

次回はより配給会社の宣伝戦略が見られるであろう、TV-CMで見ていこうと思います!


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