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エム・データが提供するタレント全量データサービス「Talent Rank」を使って、今放映中のテレビドラマを評価してみよう。


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図1:2018年夏クールドラマ(7-9月期)の主演タレントのポジショニング(1-6月期)※タレント横の数字は、各ドラマの初回世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)



図1は、以前の記事(最強タレントを探せ! タレントポジショニングで見る旬なタレント、伸びるタレント)でご紹介したタレントポジショニングチャートに、2018年夏クール(7-9月期)に関東地区地上波で放送中の21時台と22時台のテレビドラマの主演タレントたちを表示させたものだ。タレントポジショニングのデータは1-6月期、円の大きさはCM放映量となっている。7-9月期のテレビドラマの評価を放送直前の1-6月期のタレントデータで行う、つまり番組放送直前の最新データで各ドラマの成績を切ってみようというわけだ。ここから、どんなことが見えてくるのだろう。

早速図1をご覧いただこう。各タレントにつけた数字は各ドラマの初回世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だ。この数字はTalent Rankのポジショニングチャートに公表された数値を後から記入したものだ。

ドラマの場合、出演するタレントの影響力は特に初回視聴に強く反映される傾向にある。このタレントが出ているなら見てみようというタレントの持っている潜在視聴パワーは、初回放送分に顕著に現れるのだ。これは、二回目以降の視聴になるとそのドラマのコンテンツ要因が徐々に影響しはじめる傾向があるためだ。初回の視聴者は当然そのドラマを以前に見ていないし、放送前に自分が得られる数少ない情報の中からからそのドラマを視聴するかどうかを判断しなくてはならない。その結果、初回視聴の動機に占めるキャスティング要因の比率は他の要因と比べて高くなる傾向にあるのだ。タレント露出を中心にした番宣活動の影響も、その傾向を助長する。内容(コンテンツ要因)もそうだが、それ以上にこの人が出ている(キャスティング要因)のなら見てみようか、というのが一般的な初回視聴動機には強く影響するのだ。

それが、二回目以降になると、初回を実際に見た結果わかるコンテンツ要因、つまり脚本や演出やトーンやテンポなどのキャスティング以外の要因が視聴の継続に大きく関わるようになる。さらに他の視聴者の評価やメディアのレビューといった周辺情報、いわゆるバズ要因も話題作であれば回を追うごとに大きくなる。バズは既存視聴者の視聴継続の誘因動機にもなるが、バズ要因のより大きな効果はまだ見ていない新規視聴者の獲得だ。初動の番宣でも獲得できず、初回のキャスティング効果でも獲得できなかった視聴者が、この放映後のバズによって獲得できるのだ。初回を見た視聴者が発するバズを通してまだ見ていない潜在視聴者を連れてきてくれるわけだ。これはドラマのヒットパターンにおいて、極めて重要だ。





■テレビドラマの視聴パターンは三つ

最近のテレビドラマの視聴傾向は大きく分けて3つのタイプに分類される。

初めがフラット型。初回の視聴率に大きな変化なく最後までそれが維持されるパターンだ。放送回を重ねても視聴者の大きな脱落はないが、大幅な新規参入もないパターンだ。大ヒットにはならないかもしれないが安定して数字を維持してくれるので、放送局にとっては手堅いコンテンツといえる。これはシリーズもののドラマに多いパターンだ。シーズン5とか6とかやっているのは、この手のテレビドラマになる。

二つ目はダウンヒル型。初回はそこそこ数字がつくのだが、回を追うごとに数字が下がっていってしまう。気がつくとクールの途中で予定した放送回数を消化せずに早期終了なんてケースもある、初回の視聴動機をそのまま維持することができなかったパターンだ。

最後がヒルクライム型。これは最近のヒットドラマの典型的なパターンだ。初回もそこそこ数字があるが、最近のヒット作は中盤で話題が盛り上がり、最終回に向けて怒涛の上げを記録するケースが多い。放送局やスポンサーにとっては嬉しいパターンだ。これは視聴者にとっても、満足度の高いケースだろう。放送終了後は「なんとかロス」などと言われて社会現象化するのも、このパターンだ。ヒルクライム型で大きな役割を果たしているのが、バズ要因だ。もちろんそもそもの番組の魅力であるコンテンツ要因が高いことが大前提だが、その結果として実際にそのドラマを見た視聴者がその魅力を語らずにはいられなくなり、事あるごとに話題にしたくなり、その結果盛り上がったバズがまだ見ていない人たちの興味関心を掻き立ててさらに視聴者が雪だるまのように増えていくのだ。大ヒットドラマにはこのような社会現象と言えるようなバズ効果が巻き起こる。またこのケースの場合、ライブ視聴が増えることも大きな特徴だ。面白いからすぐ見たい、話題に遅れないようにライブで見たい、と思わせる効果が、特に最終回に向けてのライブ視聴を促していく。放送実況バズに自らも参画して同時視聴体験をみんなで共有したくなる。そっちの方が盛り上がるし楽しめる。結果、最終回で最高ライブ視聴率を記録するのが、このパターンだ。





■テレビランクTop 5%以上なら視聴率は二桁

テレビドラマの第一回視聴ではコンテンツ要因やバズ要因はそれほど強くなく、キャスティング要因が反映された数字が出やすい傾向にある。その初回世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の数字をTalent Rankのポジショニングチャートに入れてみたのが図1である。

いかがだろう、いくつかわかりやすいポイントがあるかと思う。箇条書きで整理してみよう。


 ・初回二桁視聴を獲得したのは、主演タレントのテレビ露出ランクが
  Top 5%(週平均200分)以上。
 ・テレビ露出ランクがTop 5%以上でも二桁を獲得できなかった例外がある。
 ・バズ(Tweet)ランクの高いタレントは視聴率も高い(11%を超える)
  傾向が見られるが、例外もある。
 ・CMランクが高く、テレビランク、バズランクが高いタレントのドラマは
  視聴率も高い傾向が見られるが、例外もある。


テレビ露出ランクTop 5%以上のタレントを起用すれば二桁を取れそうだが、Top 5%以上の全員が二桁を獲得したわけではない、例外もある。この例外を探ることで、ヒットの要因が見えてくるかもしれない。

またバズについても、バズ(Tweet)ランクが高いタレントは高い視聴率を獲得しているが、ここにも例外がある。この露出ランクとバズランクの例外に、ヒットを生む理由、ヒットに至らない理由が隠されているのではないだろうか。





■プラス要因はシリーズドラマ、CMタレント、要注意はアイドル?

バズ(Tweet)ランクが高いタレントは高い視聴率を獲得しているが、バズランクが低くても高い数字を記録したタレントがいる。東山紀之と沢村一樹だ。東山のドラマは「刑事7人 4th」、沢村は「絶対零度 3rd」。そう、両方ともシリーズものだ。ちなみにこの表の中でシリーズものはこの二作品のみだ。東山と沢村の二桁という数字は、シリーズというコンテンツ要因に底上げされているのかもしれない。またこのシリーズもの二作品の主演にバズレベルがあまり高くないタレントが起用されている。これは偶然だろうか?

Talent Rankの分類では、テレビ露出ランクは高いがバズランクは高くないタレント(Twitter Top 20%未満)のグループを「ブロードキャスター」と呼んでいる。ブロードキャスターのタレントにはバズからのサポートはないかもしれないが一定のテレビ露出量を維持している安定感、テレビでよく見る安心感があり、シリーズのような継続露出の親しみやすさを求める求める視聴者には向いているのかもしれない。事実シリーズもののドラマは、大きく化けることはないかもしれないが、極端に落ち込むこともなく、先の分類で言えば一定数の数字を最後まで維持できるフラット型の視聴パターンになることが多い。ブロードキャスター向きの番組なのかもしれない。

バズランクは中位ながらCM露出量の多い綾瀬はるか、綾野剛は11%台の中盤から後半を記録してる。バズランク上位の山崎賢人とともに、今クールのテレビドラマ初回最高水準を記録した勝ち組だ。この2名はもともとの高いテレビ番組露出ランクにさらにこのCM露出量がプラスされるわけで、総テレビ露出量でいえばさらにグラフの右側に行くことになる。テレビ露出量の多さが高い視聴率につながるのであれば、CM露出ランクもドラマにとってプラス要因であろうし、提供スポンサーや放送局の営業にとっても、CMタレントと番組提供の組み合わせは営業上メリットの多い話になるはずだ。

石原さとみ、山崎賢人に次いで三位のバズランクながら11%台に一歩及ばなかったのが松坂桃李。実は松坂出演のこのドラマ「この世界の片隅に」の主演は松本穂香であるが、ここではバズランク、テレビランクとも松本より高い共演者の松坂を評価対象とした。松坂主演のドラマであったら、ポジショニング的には11%台になっていたかもしれない。とはいえ、新人の松本を、松坂はじめ共演者がサポートをして二桁獲得、ということではないだろうか。

テレビ、バズともTop 5%以内でありながら初回7.1%であったのが、加藤シゲアキ。ただしTalent Rankでの加藤の分類は「アイドル」である。今回のドラマ出演タレントの分類は、加藤以外は全て「俳優、女優」カテゴリーである。タレントポジショニングの比較は同じタレントカテゴリー同士であれば妥当なのだが、アイドルの場合は実はもう少しバズランクが欲しいところ。アイドルは全体的に俳優、女優よりもツイート量が多くなる傾向があり、アイドルとしてみた場合、加藤のこのバズ量は少ない。アイドルがプライムタイムのドラマの主役を張る場合、欲を言えば週平均1万以上のバズレベルは欲しいところだ。

綾野剛とほぼ同じぐらいのタレントポジションにつけながら初回7.6%であったのが、吉岡里帆。CMレベルも小さくなく、このポジションの女優なら他との比較で10%後半から11%台を期待したいところだが、少し残念な結果に。もちろん吉岡主演のこの「健康で文化的な最低限度の生活」というドラマのコンテンツ要因もこの数字には影響しているのかもしれない。仮に吉岡本人について課題があるとすればどのようなことか、もう少しデータを見てみよう。





■女優の数字を作るのは同性視聴者の支持

吉岡は現在のトップ女優たちの後を追う期待の若手だ。Talent Rankで見ても、吉岡里帆は2018年上半期のテレビランク、バズランクとも全タレント中Top 20%以内という「スーパースター」の条件を満たしている。テレビランクについてはTop 5%を超えていて、バズランクについてもTop 5%にせまる超メジャータレントだ。では、なぜ2018夏ドラマの初回視聴率は低迷してしまったのだろう。Talent Rankで得られる他のデータから、吉岡の強み弱みがさらに分かるかもしれない。


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図2:吉岡里穂のトレンドチャート



図2は吉岡のトレンドチャートだ。吉岡はTBSで2017年7-9月期と2018年1-3月期にドラマ出演していて、そのタイミングでTwitterも盛り上がっているのが分かる。特に昨年末の紅白出演から「きみが心に棲みついた」のドラマ出演の時期にかけては Twitter Top 10%を連続して超えるバズメイカー振りを発揮し、これが2018上半期の高いバズランクに反映されている。ただよく見ると吉岡のバズのピークは昨年末から2018年2月ぐらいまでで、3、4、5月ごろは必ずしも高い水準ではなかったことが分かる。3月はまだ「きみが心に〜」の放映期間、と言うよりむしろ最終回を迎える大切な期間であったがその頃から吉岡のバズは沈静化していき、ピークを過ぎていってしまったように見える。「きみが心に〜」の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)も初回こそ9.4%であったが、2月後半には6%台にまで落ち込んでしまう。初期の期待値が維持できなかったパターンだ。

「きみが心に〜」以降はテレビ露出もほとんどなく、このトレンドからは吉岡のブレークが一旦沈静化していたのが分かる。今回のドラマは前作の後半の数字をそのまま持ってきてしまったかのようだ。



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図3:吉岡里穂、石原さとみ、白石麻衣(乃木坂46)についてTweetしたユーザー数の性年代別データ



図3はその吉岡と、今季11.1%を記録した石原さとみ、そしてアイドルとの比較で吉岡と同年代の白石麻衣についてTweetしたユーザー数の性年代別データだ。

吉岡をツイートしているアカウントは女性よりも男性が多い白石のようなアイドル型だ。それと比べ石原は、石原と同姓の女性が多くツイートしているのが分かる。これがアイドルと女優の違いだ。アイドルには異性の支持が多くなりがちだが、女優の場合、とくにプライムタイムで主役を張って数字を獲得しようとする場合、性年代に偏りのない満遍のない層からの支持が必要になる。プライムタイムではできるだけ多くの視聴層からの視聴シェアを獲得する必要があるわけだ。男性からはたとえば恋愛の対象としての支持を集めても、女性からはそれとは別の、たとえば同じ女としての共感の対象にならなくてはいけないのだ。石原の数字が男性目線の役柄よりも、一見地味だがリアリティのある女性を演じた時の方が上がるのも、それが理由なのかもしれない。

いかがだろう、タレントポジショニングに合わせてそのタレントのトレンド傾向、タレントツイート層の性年代分布を見ていくことでそのタレントが獲得できる支持の構造が見えてくるのがお分かりいただけたであろうか。テレビドラマをヒットパターンに持ち込むには、まずタレントパワーで初期の視聴者を確実に獲得し、その初期視聴者たちの期待を上回るコンテンツ効果でバズを連続的に発生させて最終回に向けて社会現象を巻き起こしていく必要がある。それはタレントの初期値だけに頼ってあとは視聴者が離脱離散してしまうパターンとは全く逆の方法だ。


タレント自身も化けてしまうようなコンテンツに、視聴者はどっぷりと巻き込んでもらいたいのである。





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